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伊藤勇気プロデューサー ロングインタビュー(10)

第10回(最終回)母との絆



映画製作のプロセスとは別に、私shioriが、どうしても勇気さんに伺いたかったことがあります。
シングルマザーである松井監督の息子として、同じく100年前のシングルマザーでイサムノグチを産み育てたレオニーの映画を、どう思っているのかということ。
プライベートにもかかわるデリケートな質問ですが、勇気さんはとても素直にフランクに語ってくださいました。

母の偉大さを男の子はなかなか受け容れられない

―― 映画とご自身との共通点についてどう思われますか?

勇気 うーん、僕はイサム・ノグチのような功績はないけれど、でもシングルマザーの一人息子としての絆、そういう部分に関してはすごく理解できます。

「ユキエ」が夫婦の話で「折り梅」が家族の話で、「レオニー」は母と子の話だっていうのがあるわけですが……、うーん、けっこう表には出て来ないんですよね、母と子の関係って。見えてるようで見えないっていうか。

だからこそ、なおさら絆としか言えないんですけど、やっぱり母親の偉大さというのは、娘だとまたちょっと違うかもしれないけど、息子ならなおのこと、若い時は自分が大人にならないと受け容れられないんですよ。
男だからなのかもしれないですけどね、それはある意味(笑)。

―― 男の子のほうが、小さい時から「ママ大好き」っていう部分は強いのでは?

勇気 そんなことないと思いますね。僕は5歳の時に両親が離婚してるんですが、「お母さんが大好き」って……、シングルマザーなら母しかいないんだから。お父さんとお母さんって選択できるんだったら、「ママ大好き」ってのはあるかもしれないけど。僕は幼少の時は時に父が好きでしたし、今も比べることはできないです。

でも片親っていうのは、母が父でもあるんです。今35歳の僕の世代だと、両親が離婚してるのって小学校の時は僕しかいなかった。今では全然珍しくないし大したことじゃないのかもしれないけど、当時はけっこう重かったんですよ、子供としては。

―― どんなふうにそれを実感してましたか。

勇気 だって、下校途中に友達のみんなは、「週末、ディスニーランドに行くんだ。お父さんとお母さんと」って言うんです。「そういうの、できないんだな」っていうのはやっぱりあったかな。

でも、別に親がいないから寂しいんじゃないんです。僕はおばあちゃん子で、おばあちゃんもおじいちゃんもいたから、一人でいるのが寂しい、というより、「何で自分の両親は仲良くないの?」というのが、寂しいと思ったりした(笑)。

「異形だな」っていうふうには思っていたけど、でもその代わり、他の普通の家庭ができないことを、すごくいっぱいしてもらえたから。

―― どんなこと?

勇気 たとえば、家に女優さんが遊びに来たり。自分も撮影現場とかに行っちゃったり、徹夜のマージャンに遊びに行くとか(笑)。

―― ロックコンサートも中学生の頃から長い間、一緒にいらしてたそうですね。

勇気 そうそう、ガンズ&ローゼスとか(笑)。

カメラの後ろにいるオフクロの背中を見ていた

―― 勇気さんの中では、監督の彼女と母親である彼女はパッキリ分かれてるんですか?

勇気 全然パッキリしてないです(笑)。こういうふうに映画監督としてやっているのもオフクロの一部だし。そういう意味でいうと、普通のお母さんがすることはあんまりしてないんじゃないですか。
でも、普通の親父がすることはいっぱいしてくれていると思う。留学先のロンドンにずっと生活費を送ってくれたり(笑)。

やっぱり大人になってくると、「俺はもう、オフクロとなんか一緒に住んでらんねえよ」とか、そういうのが削ぎ落とされてくるんですよ、年を重ねてくると。
僕なんかまだシングルで自分の子供もいないから、自分が親になった時の子供に対する見返りのない愛情ってまだ経験してないけど、やっぱり今回なんかは、オフクロがカメラの後ろで作品を撮ってる時に、“親の背中を見る”って感じはすごくありましたよね。

―― へえ〜っ。

勇気 だって、どう考えたって、普通に考えたら僕よりも早く消えてしまうわけでね。そしたら、これは母が後に残してくれる作品ですからね。

―― 変なこと言わないでください。

勇気 いや、遺してくれるものですよ、僕に。オフクロは死んだって、これは残るから。そこまで考えますよ。この映画が残っていくわけだから。そうするとやっぱり魂なんですよね。それを感じるのが、普通は親が死んでからだけど、撮ってる時に感じられたっていうのは、僕にとってはすごく大きかったです。
ああ、いい絵……っていうか、「これなんだ」って思いながら、そのことを実感してましたね。

―― そこまで感じてらしたとは……、びっくりしました。

切っても切れない絆

勇気 人って何でもバランスが大事だと思うんです。母の母、つまり僕の祖母は専業主婦で普通のおばあちゃんで、それこそダンナの3歩後ろを歩いて来た人ですけど、でも、愛情だったり表現だったり優しさだったり、その人柄っていうところでは、何ら劣ることはないんです。

だけど、やっぱりオフクロに対しては、僕は以前よりも年取っていっているのを見てるからだと思うけど、最初はお母さんていうだけだったのが、徐々に徐々に、本当にかけがえのない人になっていってるんですよね。
そんなことは人に話したことないし、当然本人にも言わないですが(笑)。

―― そこまで思えるようになったんですね。

勇気 でも、そういう感じ方って、けっこう新しい感覚で、僕にとっては。人間ってそういうもんなんだなって思いました。
何でおばあちゃんの話をしたかっていうと、それは誰のお母さんだって一緒だってこと。映画監督だからすごいんじゃなくて、オフクロだから。親だからすごいんです。

親は、多かれ少なかれ同じように子供を愛してくれるけど、それを大きなかたちで「おお、これなんだ」って作品を残していってくれる親としては、偉大だと思うし。
かといって「僕のオフクロ、すごいだろ」っていうようなことじゃないんです、全然(笑)。そこはお母さんだからなんですよ。

だから、みんなが「あなたのお母さんはすごいわね」って言うわけですよ。まわりの友達だって「お母さん、すごいよね。映画監督でさ」なんて。
でも、そう言われても「オフクロはオフクロだから、オフクロなんだよね」って感じなんです。

でも、僕とオフクロの間にある……誰にも話さないし、お互いに見向きもしないような、でも下で繋がっている絆っていうものは、切っても切れないのではないのでしょうか。
だけど「すごい絆なんですよ」って人に見せるもんじゃない、みたいな(笑)。

―― きれいにまとめるつもりは全然なかったのに……、涙出てきました。ありがとうございました。

| shiori | 映画 『レオニー』 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
2010/03/29 7:55 AM posted by: wakki
>yone さん、tomokoさん

いつもコメントありがとうございます!
全10回、ほんとうに読み応えありましたね。
shioriさんのインタビューに同席させて
いただいたのですが、勇気さんはとても
フランクに“洗いざらい”話してくださり、
きっとこれはマイレオニーの
皆さんになら話せる!って思って
話してくださったのかな〜なんて。

> Hisaさん

お久しぶりです!
人に見せるもんじゃないけれど
暖かくて深い絆…いいですよね。
実は今回のインタビューは
監督にはナイショで(?)行ったのですが、
アップされたインタビューを読んで
とても喜んでくださってました。
親子の記念のインタビュー、って
思っていただけるといいなぁ。
2010/03/24 9:19 AM posted by: Hisa
「ターニングポイント」を読んで「息子さんに会ってみたいと思いました」と監督に話したことがありました。
全10回、勇気さんに会った様な気がしました。いえ、それ以上に!
tomokoさんのおっしゃるように、いつかきっとまとまった読み物として発信していただきたいと思いました。

イサムとレオニーは愛憎が生涯続き、イサムの苦しさにやりきれないものがあったけど、
監督と勇気さんの関係は「『すごい絆なんですよ』って人に見せるもんじゃない」けれど暖かくて深い絆で結ばれているんですよね。
わっ、凄いいい関係って思ってしまいました。

お二人のますますのご活躍を祈っています。
有難うございました。

ああ、それにしても早くみたいで〜す!!
2010/03/19 12:16 AM posted by: tomoko
共感し、感動しながら読み終えました。
ブログとして読むのはもったいない。
全10回、いつかまとまった読み物として発信していただきたく思います。

監督と勇気さんのツーショット素敵ですね。
2010/03/17 9:06 AM posted by: yone
拍手、拍手、拍手です。前10回、素晴らしいお話でした。本当に面白かったです。映画の裏側、それも重要な裏側を見ることができて光栄です!
インタビュアーのsihoriさん、伊藤勇気プロデューサー、ありがとうございました。
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