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伊藤勇気プロデューサー ロングインタビュー(9)
第9回 エミリーとの出会い

レオニーはエミリーしか考えられない

―― 勇気さんは以前から、エミリーの人柄でこの映画は助けられたとおっしゃってましたが、エミリーってどんな人ですか?

勇気 魅力のある人、としか言えないと思います。
誰がレオニーをやるのか、というのを最初に考えた時、ハリウッドの錚々たる女優が候補としてリストに載ってたわけです。最初からエミリーの名前は出ていましたけど、ただ一番最初は、もっと有名な女優が第一候補だったんですよね。

でも、エミリーの映画を何本か観た後に、僕の中でピンッときた瞬間があったんです。「この人だ!」って。本当にその時この人じゃないとダメだ、と思ったんです。

―― 何という映画ですか?

勇気 「トランサイベリアン」(「暴走特急 シベリアン・エクスプレス」日本未公開)です。「この人、うまい!」と思った。演技がうまいし、ずっと見てられるっていうのかな。あと、下手に作り込みすぎないところがいいなと。わざとらしくないんです。

やっぱり女性のきれいさ……容姿的な部分じゃないところでの女性としてのきれいさとか逞しさっていうのを出すためには、ただ容姿がきれいなだけの人ではできないわけですよね。それを作り込んでくる人、作り込まずして持ってる人とじゃ違うと思うから。

それでエミリーにピンッと来た時から、もう他が見えなくなっちゃったんですよね。

もっともっと彼女のことを検索していくと、アーティストとして一本筋が通っている作品の選び方をしているし、このユニークなアプローチの作品、縁が多分に作用する作品の中で、彼女以外はもう考えられないって思った時があったんです。

突然、目の前にレオニーがいた! 

それこそ、まさにあのニューオリンズでクランクインした初めての日。脚本も何度も読んだし、自分のレオニー像もあったけれど、一番レオニーだったのはエミリーだったんです。
突然、目の前にレオニーがいた! って感じ。やっぱり俳優ってのはすごい!、と思わされましたね、あの時に。
いろいろ考えて、レオニーってああでもないこうでもない、こんな人で……と自分の頭の中で模索してたんだけど、とにかくあの時、目の前に本物のレオニーがいたんです。

―― 百聞は一見に如かず……。

勇気 そう。その時に下手だったり、ちゃんと役になりきれてなかったりしたら、「ほんとに?」とか「えっ、これってどこのシーンだっけ?」とか思わされちゃったりすると思うんですよね。
でも、その場でレオニーに出くわした時は、僕にとっては一番センセーショナルでしたね。あの人はやっぱりすごいですよ。多くの俳優さんはみんなそうなんだろうけど、特に彼女は。

お互いに親子同士で会った初対面

―― エミリーとの最初の出会いはどんなだったのですか?

勇気 一番最初にエミリーと会ったのは、「レオニー」に興味があるということで、松井と共にロンドンに会いに行った去年の1月13日。
彼女が今、家族と住んでいる家はニューヨークにあって、そこへも招かれて3、4時間ずっといっしよに話したりしているけれど、最初の時は、彼女はちょうど今アメリカとイギリスで公開しているマイケル・ケイン主演の「Harry Brown」という映画をロンドンで撮っていたんです。それで彼女はロンドンにいて、僕らは日本からロスへ行く予定だったんだけど、エミリーに会うために早速ロンドンに飛んだんです。

エミリーがいいレストランを予約しておいてくれるっていうんで、ロスからハイドパークのプロデューサーを呼んで、松井と僕は東京からロンドンへ。エミリーと、もしかしたらエミリーがエージェントか誰かを連れて来るんじゃないかって、ロンドンのど真ん中にある高級レストランに出向いたら、なんとエミリーはそこにお母さんを連れて来たんですよ。

―― えーっ、何てフレンドリーな……。

勇気 こっちもびっくりしちゃったっていうか、僕たちはそこで初めて作品のことも話すし、仕事の話になると思ってたから。
エミリーのお母さんは、当時エミリーのお父さんが寝たきりで、その看病がずっと続いていて、お父さんはもう、今日、明日にも…という状態だったんですよ。それで気が滅入っちゃってたので、ロンドンまで一緒にご飯食べに行こう、人に会うから一緒に来なさいって言って、彼女がお母さんに息抜きさせたくて連れて来たんですよ。

ちょうどいいことに、たまたま僕たちも親子だったから話が弾んだし、僕も彼女のお母さんに一緒に話の中に入ってもらうようにしたのが、逆に肩の力が抜けてというか……お互いに話せたのが、一番最初の出会いだったんですよ。

女優だから仕事の夕食会に、お母さん連れて来ようがボーイフレンド連れて来ようが、息子連れて来ようが関係ないでしょう。
それくらい、ちょっと触りに来たような感じだったんです。触ることもできるし、自分が気に入れば入っていける……というか。

で、その翌々日にお父さんは亡くなってしまって。でもそれがエミリー本人にとっては何かすごく縁があったと言ってましたね。



エミリーの人生の節目に「レオニー」がリンク

―― 人生の節目節目の大事な機微がいくつもリンクしてますね、この映画はエミリーにとっても。

勇気 僕が思うのは、エミリーの何がすごいかって、演技ももちろんすごいんですけど、自分の人生のワンシーンも共に賭けてくれくれたというか、一緒に経験できたっていうのが大きくて、親近感が本当に湧きました。

一緒に山を越えたっていう思いがあるから、何かあんまり、こういう人で……っていうのは言いにくい。とにかく、縁があったんです、本当に。簡単な言い方だけど本当にそういう感じ。「ご縁がありました」って。

―― エミリーも同じことを感じていたのではないでしょうか。

勇気 そうだと思いますよ。それを受け容れる許容範囲のある人だったから、こういう、ちょっと普通の映画とは違うかたちの「レオニー」を、やってみようって思ってくれたんじゃないかな。やっぱり、日本の、どこのものかわからない作品に手を出すのは、そうとう勇気が要ると思うんですよね。ああいう立ち位置にいる女優さんにとっては。

―― チャレンジャーですね。

勇気 チャレンジャーだし、すごく魂のある人ですよ。

「レオニー」が彼女にとって飛躍する作品になってほしい

―― エミリーにインタビューした時、天性のピュアさと健気さがあってすごくいい人だけれど、それだけじゃなく真に理知的で、自分のキャリアを確実に自分で選び取っている人だと思いました。そこだけ言うと計算高いみたいだけど、そうじゃなくて、自分の人生を自分で作っている人だから、「レオニー」出演を決めたんだと強く思いましたね。

勇気 失敗もあったと思うし、いい人だからだまされちゃったこともあったかもしれない。でも、まさに自分の本を自分が携わる映画によって書いてる人だな、と感じました。自分の女優としてのアーティストとしての1ベージ1ページをすごくしっかり書いている人で、「レオニー」もあくまで通過点なのでしょうね。

でも、彼女の本のあるページを「レオニー」で埋めてくれたことが、僕はすごく嬉しいし、だから作品の成功も当然大事なんだけど、これだけコントリビューション(貢献)をしてくれたんだから、彼女にとって飛躍する作品になってほしいな、というのは正直ありますね。彼女が「レオニー」によってもっと知られたり、もっと認められたら、それはやっぱりすごくやった甲斐があったなと思います。

次回は、勇気さんが母としての松井監督を語る最終回です。
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