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伊藤勇気プロデューサー ロングインタビュー (1)



「レオニー」映画製作にかかわって


新年が明け、最後の編集作業を終えて帰国した伊藤勇気プロデューサーに、「レオニー」制作の全行程についてお話を伺いました。
松井久子監督の息子であり、プロデューサーとして監督を支え、アメリカ側との折衝、通訳も含め、ロケハンから俳優へのシーン説明まで、様々な現場で大活躍した勇気さん。
日米の全現場にかかわっているのは、監督を除けば、撮影監督の永田鉄男さんと主演のエミリー・モーティマー、そして勇気さんだけ。
今でこそ明かされる秘話も満載のエキサイティングなドキュメントを、10回の連載に分けてお届けします。

第1回「レオニー」構想からシナリオ完成、撮影準備段階に至るまで

監督はポジティブというより、むしろ堅実

―― 監督の「レオニー」構想から実現まで数年かかっているわけですが、その間、勇気さんはどういうお気持ちで、監督をご覧になってたのですか?

勇気 1本目の「ユキエ」の時もそうだったんですけど、無理だとされることを成し遂げて自分のキャリアにしてきた人なので、正直企画の段階から、まったく無理だとは僕自身は思っていなかったです。
ただ、かたちになり始めてからアメリカ側のプロデューサーが変わったり、今の体制になるまで何度も行ったり来たりしたところがあったので、たぶん本人の中でもどこかで、ここまできたらもうダメだろう……というのはあったかもしれない。でも、そう簡単に折れる人じゃないというか(笑)。

だから僕も今の体制になるまでは、どうしても監督本人の"前に進めて行く力"を信じていくしかなかったので。長い年月をかけてここまで来たんだから、っていうのがすごく糧にはなっていたんだと思うし、力になっていたと思う。七分八分まで来たんだったら、あと二分三分、何とかがんばろうと思って、たぶんずっとやってたんじゃないかと思います。

でも、何度となく前が見えなくなったことはあったし、「じゃあどうするのかな?」って時に、いい意味で折れるとか後ろに下がることを知らないから。かといって、ただがむしゃらに前に進んでいるわけじゃないけど、監督の、前に進む力というのは、近くで見てても学ばされるところがありました(笑)。

―― もともと監督はポジティブな人なんですか?


勇気 どうなんでしょう。ポジティブっていうと、あっけらかんと何でもいいように考えてという感じだけど、そういうタイプではないと思います。すごく客観的だったり、自分の視点というものが、僕なんかは彼女本人の持ってる能力のひとつとしてあると思います。また、すごく落ち着いたところがあるので、何か悪いことが起きた時でも何でもポジティブに前へ前へ、ってタイプではなく、けっこう堅実だと思います。


出資していただける人にたどりつけたり、本ができあがってそれを英語に書き直すための良い脚本家に出会えたりとか、多かれ少なかれ周りの人たちは手伝ってくれたり、道を一緒に探ったりしてくれるけれど、やっぱり彼女が持ち得た縁っていう部分は大きいんじゃないかなと思います。

最初からやりたいものが的確に見えていたシナリオ

―― 勇気さんが最初にシナリオを読んだ感想は?

勇気
 僕はシナリオのプロではないし、彼女の本(シナリオ)に関しては、いつもどこか淡々としてるんですよね。でも今回の本は、題材自体がおもしろいというか、人を惹きつけるだけの魅力があると思いました。最初に受けた感じでは、とてつもないインパクトというよりは、松井の持っているストーリー・テリングのシークエンスの中……2時間を流していく中で、最後にドンと気持ちに入ってくるところが、もうすでに初稿の時点であったように思います。

でも、実質的にこれを撮影する場合、お金がかかり過ぎるとか、当然そういう問題が出てきて、シナリオがシェイプアップされていったんですけど、「ここはやりたいんだ!」っていうものは、最初からエレメントとしてはあったので。
本はやっぱり本なので、映像になるまでは勝手な想像の中での言葉のやりとりだったりするんだけど、母と子の話であったり、当時の時代背景の中での女性としてのレオニーの生き方であったりという、基にある題材的なところはしっかりと入ってたので、後は本の中で描いたことをどう映像化するのが大事だなぁ、と思いました。

たとえば、ニューヨークのシーンをニューヨークで撮れたらもっとリアリティがあったのかもしれないけれど、そういうところでも妥協ではないけれど、いろいろなやりくりを組み合わせていかなきゃいけないのも映画作りのひとつだから。
そういう意味では、本を最初に読んだ時、やりたいものが的確には見えていたと思うけど、それが最後の本になるまでにその具現化がどんどん変わらざるを得なかった。逆にいうと「これからやらなきゃいけないものがいっぱいあるな」と思ってましたね。

もっとドラマティックなほうが人は入りやすいのかな、と……

―― シナリオの変更に関しては何かアイデアを出されましたか?

勇気 基本的に彼女は表現者として自分のやりたいことをひたすら考えてる人だから、あんまり僕から「これはどうなの?」っていうのは、ないんですよ。
逆に映像として見て、「あそこはちょっと入りずらい」とか「あれはないほうがいい」っていうのは言いやすいし、結構彼女も僕の感覚を信じてくれるんです。
でも、彼女自身にこだわりがある場合は、本人が的確にわかっていて、「いや、それをやりたいのよ」「そこが必要なのよ」ってちゃんと説明が返ってくるから、途中で「ここはちょっと」って思うことはなかったんですよね。

ただ、映画としてはもっとドラマティックにしたほうが人は入りやすいのかな、って思うところは当然あるわけです。だけどそこが本人のカラーであって、淡々としていながら、一個一個の情報や気持ちを積み上げていくっていうのが本人のスタイルだから、その一個一個に対して「あれはどうかな」というのは、特になかったです。

最終稿のほうでは、このシーンでこんな一個のことにお金かけちゃったら、他のところがもったいない、それだったら他のシーンでもっといい美術を作らせてあげたい……という表現の中でのバランス、割り振りはある程度指摘しました。
一個一個のことに関しても周りから言われる以上にちゃんと本人が考えているし熟知してるので、本の変化に対しても何も言うことはなかったです。

―― プロデューサーは映像を具現化することが仕事ですものね。

勇気 僕はただ信じて、それよりも実質的なところで撮影までちゃんと辿りつけるのか、撮影開始したら問題なく撮影時間内に撮りきれるのか、主演女優が不機嫌でトレーラーから出て来ないみたいなことがないようにしないと、とか(笑)、そういうことのほうを常に考えていましたね。

映画の場合は、本当にそういうことをいっぱい耳にするし。僕としては常に毎日、何もそういった事故がないようにっていうことに神経を使っていたから、映画作りの仕事の分担ができてたというか。「そこはあなた、ちゃんとやってくれないと困るよ」みたいな(笑)。

次回はいよいよ、「レオニー」が日米合作映画として成立するための第一歩、アメリカ側との折衝のお話に。母子での渡米、アメリカ側のプロデューサーの決定、また、勇気さんだからこその“プロデューサー魂”についても語っていただきます。

| shiori | 映画 『レオニー』 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
2010/02/19 10:21 PM posted by: ちゃちゃ
勇気さんのことは「ターニングポイント」でお馴染み、人は成長するのだ〜〜とつくづく思いますっていったら笑われるだろうなあ。
いやいや、楽しみですね。
プロデューサーの腕がよければ、監督はのびのび仕事ができるだろうから・・・でも、お金のこともあるし、そうなるとバトルもあるだろうなあと推測します。
2010/02/18 1:02 AM posted by: tomoko
おー!10回連載ですか!!
第一回にして読み応え十分!!面白い!!!
次回が楽しみです!!

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