無料ブログ作成サービス JUGEM
←prev entry Top next entry→
つくばロケにて 松井久子監督インタビュー (前編)
6月25日、一日の撮影が終わって晴れ晴れとした表情の松井監督に、
この日で映画全体のおよそ四分の三を撮り終えたこれまでの感想と、現在の心境を伺いました。
前編、中編後編の3回に分けてロング・インタビューをお届けします。(shiori)




日米とも最高の撮影スタッフ、最強のチームワーク

―― 現場に入ってまず感動したのは、衣裳は元より、ヘアメイク、美術さんなどのクオリティがすごく高いですね。

松井 それは今回、私のものすごい幸せです。私が、外国の人々に一番見せたいと思っている当時の日本の美しさが、確実に表現されています。本当にお布団一枚、蚊帳一つ、考え抜かれて選ばれているから。

衣裳も、アメリカの撮影では「カラーパープル」などを担当したデザイナーのアギーが、100年前の嘘のない衣裳をエミリーやみんなに着せてるし、日本では黒澤和子さんが、黒澤和子さんじゃなきゃわからない、あの時代の和服っていうものを再現してる。素晴らしいと思います。

―― チームワークのよさにも驚きました。

松井 スタッフたちがみなさん、本当に仕事の動きがいいし、怒鳴りあいとかマイナスなことを発する人が誰もいないのね。スタッフは、それぞれキーになる人がいて、その下にそれぞれたくさんの人がついているんだけど、キーの方たちがみんないいから、チーム自体がいいの。それで、雰囲気がとってもいい現場なんです。


―― アメリカでも日本でもスタッフに恵まれましたね。

松井 日本のほうが、私に対する偏見もあるだろうって、最初は不安もありました。日本のスタッフのほうが、みんなベテランが多いから、そういう人たちのプレッシャーの中で、アメリカでのように自分の思う要求ができるかしら、とそれが心配で、アメリカの人たちを日本に連れてきて、そのままやりたいとか思っていたんだけど、日本のスタッフの中に入った途端に、みなさんがすごく私のリーダーシップに対応してくれて、嬉しかったですね。

それは私自身も、前作2本の時より変わったんだろうし、相互のものだと思うんだけど、一番強く思うのは、自分が自信とか余裕のない時、何か自分にコンプレックスを抱えている時は、なかなかリーダーの仕事というのはうまくいかないと思うの。

明確なビジョンを持つリーダーシップが人を動かす

だけど今回、やってみたらなぜか、私はすごく明確に「こうしたい」っていうこだわりがあることに気づきました。客観的な言い方をすれば、リーダーは明確なビジョンがあればあるほど、かかわる人は作業しやすいでしょう。

―― 監督に迷いがないのですね。

松井 この映画は、6年間も考えに考え抜いてシナリオも10数稿重ねていて、自分の中でビジョンがめちゃくちゃ明確だから、よくアメリカでも、こんなに「こうしたい」っていうのがはっきりしているのは珍しいっていうことを、すごく言われた。

俳優さんと議論して現場が止まっちゃったり、どう撮っていいかわからなくなっちゃって、カメラマンともうまく意志の疎通ができなくて、現場が止まるってことはけっこうあるんですけど、それが今回、全然ないの。

それは、撮影監督である永田さんと私が必ず、日本でもアメリカでも助監督と3人で、このシーンはこう撮ってこう撮ってこう撮るというのを、現場に入る前に、自分たちの中で予習して整理しておくからなんです。そうやって準備しているから、みんなに仕事しやすいって言われるんだと思う。


永田さんの監督へのリスペクトが現場を統一


―― カメラワークはいかがですか。

松井 永田鉄男さんはシネマスコープしかやらないのですが、シネマスコープって初めてなんですよ、私は。今まではビスタビジョンだったから、絵の作り方が違う。最初はとまどいもありました。お互いが現場でケンカもするし、意見が食い違うこともあるんだけど、やっぱり私たちが一番、永田さんでよかったと思うのは、お互いのリスペクトが絶対であるっていう・・・、それがみんなにも伝わるんでしょうね。

―― 永田さんの映像はすごく独特ですね。色と光で彼の映像だってわかる。何ていうんでしょう、質感が艶っぽいというか、濡れているような・・・。

松井 そう、濡れているのよね。彼はアーティストなんだけど、変にねじれてない人なのね。少年のようなの。だから、自分の思う絵が撮れない時はイライラもされるんだけど、それがすっごくわかりやすいのね(笑)。

それと私たち、今まで何度も現場で意見が食い違って、ぶつかったりもしたんだけど、絶対に翌日に残らない。ケンカして「じゃあ、お疲れさま」って帰る道々は引きずらないっていう、そういう意味では珍しい相性。

―― アメリカと日本で違いはありますか?

松井 日本のほうがピラミッドが堅固ね。

―― 日本の映画界は監督を頂点として、よく天皇制になぞらえられますね。

松井 「監督、カメラ前に行かれますか? 」とかね。助監督さんの私への腰の低さっていうのがあって、だからみんなもそうなんだけど、アメリカのほうがカジュアル。もう「ヒサコ、ヒサコ、ヒサコ・・・」って感じ。
どっちのよさもある。私は日本のピラミッドみたいなのは苦手なんだけれど、でも、それはそれで明確だから私自身、開き直って、今はそれに従ってやらせてもらってますけどね。

―― そこで、謙虚に振る舞うと逆にバランスが崩れませんか。

松井 自分に自信がないと謙虚ぶっちゃうのよね。だけども、今回の「レオニー」ばっかりは、悪いけど「私がこうしたいのよ! 」っていうのを、なぜか言っちゃうのね。

―― 撮影を拝見していたら、監督がモニター位置で「あれ、やめて」っておっしゃると、助監督さん以下、パーッと現場のカメラ前まで伝令が回り巡って、数分後には監督の望み通りの絵が撮れてる。びっくりしました。スタッフ全員の集中力が結集している研ぎ澄まされた現場ですよね。それでいてギスギスしてなくて、なごやか〜な雰囲気。

松井 監督の意見をカメラマンがリスペクトしてないと、まとまらないのよね。陰口も出てくるだろうし。だから、照明の佐野武治さんとか永田さんのキャリアから較べたら、私なんかが何でこんなにしてもらえるんだろう、って思うんだけど。

―― 永田さんの監督へのリスペクトが、現場全体に浸透しているからでは?

松井 そうだと思う、本当に。永田さんの存在感は絶大ですよ。


この後、中編に続きます。どうぞお楽しみに。

| shiori | 『レオニー』 製作レポート | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
name:
email:
url:
comments:
Trackback
トラックバック機能は終了しました。